<桜盆栽の特徴>
桜
(英名:cherry,cherry blossom)
桜といえば染井吉野(ソメイソシノ)が有名ですが、サクラはもともと剪定すると切り口から枯れこむため、刈り込んで小さくつくる盆栽が難しい樹種です。
盆栽にされるのは比較的剪定に強い富士桜(フジザクラ、マメザクラ)やヒカンザクラ(緋寒桜)くらいです。これらは剪定後の萌芽力も強く、花や葉が小さいので盆栽にぴったりです。また、一般的に一才桜という名称で販売されているサクラは旭山桜という種類です。サクラの魅力は花と幹の味わいなので、気長に持ち込んで古肌をつくります。
以下に、桜盆栽の特徴を詳しく説明します。
春の花
桜盆栽の最も大きな魅力は、春に咲く美しい桜の花です。
- 花の種類: 桜盆栽では、一重咲きのシンプルな花から、八重咲きのボリュームある花まで、さまざまな種類の花を楽しむことができます。特に人気が高いのは淡いピンクや白い花を咲かせる品種です。
- 花の時期: 桜盆栽は、品種によって開花時期が異なり、早春から晩春まで花を楽しめます。開花時期は通常3月〜4月で、短期間ですがその儚い美しさが多くの人を魅了します。
- 満開時: 桜の花が咲き誇る瞬間は、盆栽としての完成された美しさが際立ちます。小さな鉢の中に咲く桜は、自然の風景を縮小したような趣を持ち、屋内外で楽しめます。
葉の美しさ
桜は花が終わった後に、新緑の美しい葉を展開します。葉の形は細長く、光沢のある緑色が特徴です。秋には紅葉し、黄褐色や赤色に変わります。この季節ごとの変化も桜盆栽の魅力の一つです。
樹形と枝ぶり
桜は自然な樹形を楽しむことができ、幹や枝の美しい曲線が魅力的です。特に盆栽としては、次のような樹形が人気です。
- 立ち姿: しっかりとした幹と柔らかな枝ぶりが、桜の自然な姿を美しく表現します。盆栽としても桜の繊細でありながら力強い姿が引き立ちます。
- 枝垂れ桜: 枝が下向きに垂れ下がる枝垂れ桜は、特に優雅な印象を与えます。このタイプの桜盆栽は、花の咲く姿が滝のように流れるような美しさがあります。
四季の変化
桜盆栽は、春の花、夏の新緑、秋の紅葉、冬の休眠状態と、一年を通じてさまざまな表情を見せてくれます。
- 春: 花が咲く時期が最も注目されます。
- 夏: 葉が茂り、涼しげな緑の風景を楽しめます。
- 秋: 紅葉が美しく、葉の色が変わる様子を観賞します。
- 冬: 葉が落ち、木が休眠状態に入りますが、枝や幹の形が美しく、シンプルな冬の姿も味わい深いものです。
サイズと管理のしやすさ
桜は一般的に成長が早いため、定期的な剪定や整枝が必要です。盆栽としては小さく育てることができますが、枝が伸びやすいので管理には注意が必要です。特に、花が咲く時期や剪定のタイミングを見極めることで、樹形を美しく保つことができます。
<桜盆栽 管理>
置き場所
桜は日光を好む樹木です。十分な日当たりと風通しの良い場所に置くことで、健康に育ち、花付きも良くなります。
- 春〜秋: 日当たりの良い場所に置きましょう。桜は十分な日光を浴びることで、健康な成長が促されます。風通しの良い場所に置くことも重要で、特に湿気がこもる場所は避けます。
- 夏: 真夏の強い直射日光は葉焼けを起こすことがあるため、午前中の光が当たる場所か、半日陰に移動させましょう。暑すぎる場合は、遮光ネットを使って日差しを調整すると良いです。
- 冬: 桜は耐寒性があり、寒さに強いため、冬場は外で管理できますが、強風や霜に直接当たらないように注意します。
水遣り
桜は水を好みますが、過湿を嫌います。土の状態に気をつけながら水を与えましょう。
- 春〜秋: 土の表面が乾いたら、たっぷりと水を与えます。夏場は特に乾燥しやすいので、朝と夕方の1日2回水やりが必要な場合もあります。ただし、水のやりすぎは根腐れの原因になるため、鉢底の排水がしっかりできるようにしておきます。
- 冬: 冬は桜が休眠期に入るため、水やりの頻度を減らし、土が完全に乾燥しない程度に適度に水を与えます。
根張りが旺盛で葉も大きく、水を好む方なので水切れに気をつけます。ただし、花が付かない原因にもなるので、やり過ぎないようにします。
肥料
桜盆栽は、春と秋に肥料を与えることで健康に育ち、花を咲かせます。ただし、適切な量を守り、肥料の与えすぎに注意しましょう。
- 春(花が終わった後): 花が咲いた後は、有機肥料や緩効性の化成肥料を与えます。花後の肥料は、翌年の花芽形成に重要です。
- 秋: 秋には再度肥料を与えて、根の成長を促し、翌年の健康な成長をサポートします。
- 夏と冬: 夏と冬には肥料は必要ありません。特に冬は休眠期に入るため、肥料を与えると逆効果になります。
真夏を除く4~10月に月一回、玉肥を施します。
植え替え
毎年、9~10月に基本用土で植え替えをします。
根がよく張るのでできれば毎年でも行います。
3月も行えますが、遅霜を避けます。長い根を切り詰めて細根を出させますが、あまり太い根は一度に切ると切り口が傷みやすいので、2年かけて切り落としていきます。
病害虫
桜はアブラムシやハダニ、うどんこ病などの病害虫にかかりやすい植物です。早期発見と対策が重要です。
- 定期的なチェック: 葉や枝に異常がないかを定期的に確認し、異常があれば早めに対処します。特に、アブラムシやハダニがつきやすいので、見つけたらすぐに取り除くか、必要に応じて殺虫剤を使用します。
- うどんこ病対策: 風通しの悪い場所に置くと、うどんこ病が発生しやすくなります。適切な剪定と置き場所の管理で、風通しを良く保つことが病気予防につながります。
新芽を好むアブラムシが発生します。植え替えには新しい用土を使って根頭がん腫病などを移さないように気をつけます。
冬の管理
桜盆栽は耐寒性があるため、冬は屋外でも冬越しが可能ですが、特に寒冷地では鉢が凍結しないように注意が必要です。
- 防寒対策: 強い霜や風にさらされると、根が凍ってしまうことがあるため、寒さが厳しい地域では鉢を断熱材や布で包む、または屋内の明るい場所に移動することが推奨されます。
<桜盆栽 手入れのコツ>
剪定
桜盆栽は、花が終わった後と冬の剪定が重要です。適切な剪定を行うことで、美しい樹形を保ち、来年の花付きも良くなります。
- 花が終わった後の剪定(5月頃): 桜の花が終わった直後に剪定を行い、不要な枝や伸びすぎた枝をカットします。特に細かい枝や混み合った枝を間引くことで、樹形を整えると同時に風通しを良くし、病害虫の発生を防ぎます。
- 冬の剪定(12月〜2月頃): 冬の休眠期には、大きな剪定を行い、来年の樹形を整えます。この時期に太い枝や不要な枝を剪定することで、春に新しい芽が元気に出てきます。
花芽がつくのは日当たりのよい充実した短枝なので、花後に長い枝を切り詰めておきます。7~8月には花芽がつくられ、10月にはよくわかるようになるので、花芽を落とさないようにすれば、不要枝を切る事ができます。ただし、葉芽も大きくなってくると花芽と区別が付かなくなってくるので、できれば花芽が出来る前に樹姿を想定した剪定を行ってください。
ハサミはほかの木を切った後なら消毒し、太い枝を切ったときは癒合剤を塗っておきます。とにかく菌が切り口から入り込まないようにすることが大切です。
針金かけ
桜の枝は成長が早く、若い枝は柔らかいため、針金掛けで樹形を整えることが可能です。針金は枝に食い込まないように定期的に確認し、成長に合わせて外します。
- 適した時期: 春や夏の成長期に針金を掛けて、枝を理想の形に整えます。ただし、成長が早いため、1〜2か月ごとに針金が枝に食い込んでいないか確認することが大切です。
6月頃に単調な枝に針金をかけ、曲をつけます。傷つけないようにしましょう。
繁殖
新梢を3節くらいで切って、梅雨挿しができます。葉が大きいので、蒸散を抑えるため1~2枚にして半分に切ります。接ぎ木も可能ですが、ナイフなどはしっかり消毒して作業します。
<桜盆栽 月毎の手入れ>
【一月】
寒さに強いので、風や下が当たらない軒下程度の保護で充分です。非常に病害虫が多いのでこの時期の消毒は欠かせません。
【二月】
耐寒性があるので、基本的に軒下程度の保護で大丈夫です。この時期は枝先を整える程度の剪定が可能です。
【三月】
剪定を行い保護する樹であっても軒下程度で大丈夫です。3月中旬頃から植替えが可能です。
【四月】
3月中旬頃から4月上旬が植え替えの適期です。また、3月下旬から10月頃までは
定期消毒も欠かさず行いましょう。
【五月】
植え替え適期は4月上旬頃までです。花後はすぐに葉が開いてしまうので、早めに花ガラを摘み取るようにしましょう。
【六月】
新梢が伸び止まる5月下旬頃から先芽を摘み、針金で曲付けしつつ伏せこみます。この時期はお礼肥を与えておきましょう。
【七月】
新梢が伸び止まるこの時期からが、芽摘みや針金かけの適期です。針金の食い込みには気をつけましょう。また、水を大変好むので、水切れには注意しましょう。
【八月】
7月上旬頃まで剪定が可能ですが、花芽分化の時期なので花芽を切り落とさないように注意しましょう。遮光下で管理し、水切れには要注意です。
【九月】
引き続き遮光下で管理します。一度水切れさせると根腐れや枝枯れを生じるため、腰水灌水などしながらこまめな水やりを心がけましょう。
【十月】
水管理・病害虫対策の徹底を。9月中旬以降からは植え替えも可能です。
【十一月】
10月中旬頃まで植替えが可能です。水を好む樹種ですから、水はけの良い用土を選んで植え替えましょう。定期消毒も欠かさずに。
【十二月】
寒さには比較的強いため、樹勢に問題がなければ棚上でも越冬可能です。冬季消毒励行。