<五葉松盆栽の特徴>
五葉松,ゴヨウマツ
(英名:Japanese White Pine,goyo matsu)
松柏(しょうはく)の1種で、短い葉が5本ずつ出ることが特徴です。
樹勢が強いわりには生長がゆっくりしており、盆栽の代表種として広く、長く人気のある樹種です。短小で密に生じる葉はあらゆる樹形に調和し、さまざまな風趣を醸し出します。
四国の赤石・石鎚地方の四国五葉、福島県吾妻山の吾妻五葉、栃木県那須地方の那須五葉が盆栽では有名です。
芽がたくさん出てくる八つ房性も人気があり、特に那須五葉系の「瑞祥」は有名です。
また香川県高松市の鬼無では、接ぎ木の五葉松盆栽を多く産出する名産地となっています。成長の早い黒松などの台木に五葉松を接ぎ、成長の遅い五葉松を早く成長させる手法となります。
以下、五葉松盆栽の特徴です。
針葉の特徴
- 短く柔らかい葉: 五葉松の針葉は他の松に比べて短く、約3~5センチほどの長さです。名前の通り、5本の葉が束になって生えるのが特徴です。葉が柔らかく、青緑色や青白色をしているため、非常に繊細で優雅な印象を与えます。
- 針葉の色合い: 五葉松の葉の色は、淡い青緑色や銀白色を帯びた青色で、光沢があり美しいです。この独特の色合いが、五葉松の上品な雰囲気を引き立てています。
成長の遅さ
五葉松は黒松に比べて成長が遅いのが特徴です。このため、五葉松盆栽は長期間にわたって形を保ちやすく、じっくりと時間をかけて育てることができます。成長がゆっくりな分、樹形が安定しやすく、精巧な形を保つのに適しています。
幹の特徴
- 力強く風格ある幹: 五葉松は成木になると、幹が太くなり、力強さと風格を持ちます。幹の皮が古くなると、亀裂が入り、独特の風合いが生まれ、古木のような趣を持つ姿になります。
- 白い樹皮: 成木の幹は、灰白色や淡い褐色の樹皮を持ち、時間が経つにつれてさらに魅力的な外観になります。この色と針葉の青緑が調和し、盆栽全体に洗練された印象を与えます。
樹形の美しさ
- 自然な樹形を保ちやすい: 五葉松は、枝が自然な曲線を描きやすく、全体的に柔らかで優雅な樹形を形成します。直幹(まっすぐな幹)や模様木(曲がりのある幹)など、さまざまな盆栽スタイルに適応しやすく、自然な形で美しい姿を保つことができます。
- 針金掛けの適応: 五葉松は成長が遅いため、針金掛けで幹や枝を整える作業がしやすいです。特に若木の頃に幹や枝を整えておくと、自然で優雅な形に仕立てることができます。
風通しの良い枝振り
五葉松は枝が自然に間隔をあけて伸びやすく、枝葉が密集しすぎることなく、風通しの良い姿になります。これにより、病害虫の発生を防ぎやすく、健康的な状態を保つことができます。
耐寒性と栽培のしやすさ
- 耐寒性が高い: 五葉松は寒冷地でもよく育つ耐寒性を持っています。特に日本の高山地帯に自生していることから、冬の寒さにも強く、屋外での栽培がしやすいです。
- 丈夫で長寿: 五葉松は非常に丈夫で、適切に管理すれば数十年、さらには数百年にわたり生き続けることができます。この長寿の特性から、五葉松盆栽は世代を超えて受け継がれることも多いです。
管理が比較的容易
五葉松は他の松に比べ、管理が比較的簡単とされています。針葉が密集しすぎないため、剪定や針金掛けなどの作業がしやすく、初心者でも育てやすいとされています。ただし、成長が遅いため、慎重にケアする必要があります。
日本文化との関わり
五葉松は日本の文化や庭園でよく使われ、神聖な木としても大切にされています。特に高級な盆栽としての価値が高く、古くから日本庭園や茶室の装飾としても重宝されています。また、五葉松は「長寿」の象徴とされ、縁起の良い木として敬われています。
<五葉松盆栽 管理>
置き場所
五葉松は日光を好む植物です。風通しが良く、日当たりの良い場所に置くことが基本です。ただし、強い直射日光に当たりすぎると葉が焼けることがあるため、夏場は半日陰に移動させるか、遮光ネットを使用して強い光を和らげます。
冬: 五葉松は耐寒性がありますが、鉢植えの場合は強い風や霜から守るため、寒冷地では保護が必要です。屋外で育てる場合は、風除けを施して冬越しを行います。
春と秋: この時期は、直射日光をしっかりと浴びせることが成長に最適です。
夏: 高温多湿に弱いため、直射日光を避け、涼しい場所に移動させます。午前中は日光に当て、午後は日陰にするのが理想的です。
水遣り
五葉松は乾燥を好む性質があり、過湿に弱いです。水やりの際は、土の状態をよく観察し、土の表面が乾いてから水をたっぷりと与えます。
- 春と秋: 成長期なので、適度に水を与える必要があります。土が乾燥してからしっかりと水をやりますが、常に湿った状態にしないように注意します。
- 夏: 乾燥しやすい夏は、特に朝と夕方に水やりを行います。昼間の高温時は水やりを避けましょう。
- 冬: 休眠期には水やりの頻度を減らし、乾燥しすぎないようにしますが、控えめに与えるのがポイントです。
ゴヨウマツとアカマツはマツ類の中でも特に乾かし気味に。
用土も水はけをよくしましょう。特に短い葉に仕立てたい場合、水遣りは抑え気味にします。これは他の松よりも過水に弱いためです。
肥料
五葉松は、成長期に適度な肥料を与えることで健康に育ちます。肥料は春と秋に与えますが、夏の暑い時期や冬の休眠期には控えめにします。
- 春(3月〜5月): 新芽が出てきたら、固形の有機肥料か液体肥料を使い、月に1〜2回程度与えます。
- 秋(9月〜11月): 秋も成長が活発になる時期なので、肥料を与えて冬に備えます。
- 夏と冬: 夏の暑い時期と冬の休眠期は肥料を与えません。
春から秋の生長期に、梅雨時と真夏を除き、窒素分主体の玉肥を施します。
植え替え
五葉松盆栽は、若木のうちは1~2年に1回、古木になってからは3~4年に一度の植え替えが必要です。植え替えによって、根の健康を保ち、鉢内の環境をリフレッシュします。
- 時期: 植え替えは休眠期の春(3月〜4月)または秋(9月〜10月)に行うのが理想です。新芽が動き出す前に植え替えることで、木への負担を軽減します。
- 方法: 鉢から五葉松を取り出し、古い土を軽く取り除いて、長く伸びた根や絡み合った根を剪定します。その後、新しい盆栽用土に植え替えます。土は排水性の良いものを使用し、鉢の底に砂利を敷くなどして、水はけを良くします。
三月下旬~四月上旬に根を整理し、水はけのよい用土で植え替えをします。
水はけをよくするには、砂の割合を増やすことが必要ですが、水遣りで崩れないかたい土を使うことも大切です。また、植え替えの際には根張りがよく見えるようにう植えかえることも大切です。
病害虫
五葉松は、病害虫に比較的強いですが、ハダニやアブラムシ、カイガラムシ、ワタムシなどが発生することがあります。特に風通しが悪い環境では害虫が発生しやすいので、定期的に葉や枝を観察し、早めに対処します。
- 予防: 樹形を整えることで風通しを良くし、病害虫が発生しにくい環境を作ることが重要です。また、時折殺虫剤を使用して、害虫の発生を防ぎます。
- 病気: 根腐れや葉枯れ病などが起きることがありますが、過湿を防ぎ、通気性を確保することで予防できます。
アブラムシ防除のため、薬剤散布を行います。
冬の間には冬季用の殺虫・殺菌剤、発生をみたらアブラムシの専用薬剤が有効です。このほかアカダニ、ワタムシに気をつけます。
<五葉松盆栽 手入れのコツ>
芽摘み
四月下旬~五月頃、新しい芽が出たら、成長のバランスを保つために芽摘みを行います。強い芽を半分から1/3残すぐらいに摘み取ります。強い芽だけを摘み取ることで、他の芽が均等に成長し、枝が密に茂るようになります。
指で軽くつまんでひねるようにして摘み、残りがほぼ均一になるようにします。
芽切り
五葉松は生長がゆっくりなので普通は不要ですが、5~6月に目立って伸びてきた部分は、3葉を残してハサミで切ります。
葉透かし
11月になったら前年葉を取ります。葉を透かす感じで、込んだ部分は新芽もとります。
葉元をほんの少し残す感じで切り、全体のバランスを取ります。
剪定
休眠期、または植え替え時に枝先を二股になるように剪定します。
生長期に幹や枝を傷つけるとヤニが出て汚くなります。
3つ以上ある芽の中心部や上下に向いた芽を切り、左右の二つにしていきます。不要枝も二股になることを想定して切り、骨格を整えます。
太枝は少しえぐるように切って肉巻きを待つか、枝元を短く残して樹皮を剥ぎ取ってジンを作ります。
針金かけも同時に行い、樹姿全体を整えます。
針金かけ
五葉松の樹形を整えるために、針金掛けが行われます。枝や幹が柔らかい若い時期に針金をかけて形を作り、自然な樹形を形成します。
- 適した時期: 針金掛けは、秋から冬にかけて行うのが一般的です。成長期を避けることで、針金が枝に食い込むリスクを減らすことができます。
- 技術と注意点: 針金を枝や幹に巻き付けて、樹形を整えますが、あまり強く巻かずに慎重に行います。定期的に針金を確認し、枝に食い込まないように注意しましょう。
11~3月の休眠期、枝葉を整理してからかけます。
若木のうちに曲付けをして骨格を作ったり、上向きの枝を下げたりするだけでなく、左右に伸びる芽を上に向ける(芽おこし)のも重要です。
五葉松は葉を横に伸ばしてしまうので、左右に残した芽は先端をこまめに上向きに直して方向をそろえる必要があります。
針金は1年くらいかけっぱなしにします。
繁殖
実生は冬に趣旨が売られているので、これを入手し、いったん冷蔵庫に保存して三月にまくか、まいてから鉢を霜の降りない戸外に置きます。
実が青いうちに取り、熟して種子が飛び出すのを集める方法もあります。
いずれも種子を乾かさないことがポイント。
鉢上げは翌年、直根を切って植えつけます。
何本か育ってきたら、奇数にしてそのまま寄せ植えとして育てると、松林の風景になり、オリジナリティのある一鉢になります。
取り木、接ぎ木でも増やせます。
接ぎ口があまりよくない接ぎ木なら、取り木で再生するのも良い方法です。時期は2~3月、芽が動き出す前に発根させます。
<五葉松盆栽 月毎の手入れ>
【一月】
棚上で管理しますが作業を行った樹は保護します。二月下旬から枝接ぎが可能です。
【二月】
二月下旬から芽接ぎが可能です。剪定・針金かけを行った樹は保護します。
【三月】
三月中旬~四月中旬が植え替え適期。ミドリつみを行って樹勢を調節しましょう。
【四月】
若木で新梢が長く伸びたもの(ミドリ)は、まだ柔らかい間に折り取っておく。
【五月】
芽摘みが遅れたものは五月中旬~六月上旬頃に中芽切りを行います。また、剪定・整枝など強めの作業も可能です。
【六月】
病害虫が発生しやすい時期です。定期消毒は欠かさず行いましょう。
【七月】
蒸れに弱いため、採光・通風環境の良い棚場で管理しましょう。七月下旬頃から古々葉取りを行います。
【八月】
八月中旬過ぎ、新葉が固まったのを確認できれば、フトコロ部分の培養環境改善のため古葉(一昨年葉)を整理しましょう。
【九月】
混み合った部分の枝葉を剪定し、フトコロの採光・通風条件を改善。10月中旬から針金掛けも可能です。
【十月】
剪定・針金整姿の適期。冬季保護を前提に幹曲げ・枝操作も可能です。
【十一月】
基本厳寒地を除いて屋外で管理可能。空気が乾燥し始めており、意外にも水切れしやすい時期なので、乾いたら与えるを心がけましょう。
【十二月】
棚上で管理しますが作業を行った樹は保護します。また過水や水切れには要注意です。