<梅盆栽の特徴>
梅,野梅,ウメ
(英名:Japanese apricot,ume)
早春から咲く花は清楚で、芳香を漂わせ気品があります。
樹勢が強く、幹肌に風格があり、花つきが良いので古くから盆栽として親しまれています。
品種改良が進み、300種とも500種とも呼ばれています。
園芸の分類では野梅系、緋梅系というように系統別にされていますが、盆栽にされるのは原種に近い強健な野梅系がほとんどです。なかでも野梅系の「寒紅梅」「思いのまま」「甲州野梅」「米良」などが良く作られます。
ほかに枝の髄が紅色の紅梅系緋梅性も人気があります。
梅の花は、美しい香りと色彩が特徴で、盆栽としても非常に人気が高いです。以下に、梅盆栽の特徴を詳しく説明します。
美しい花
梅盆栽の最大の特徴は、冬から早春にかけて咲く美しい花です。梅は、桜よりも早い時期に花を咲かせ、特に寒い時期に咲くため、季節感を強く感じさせる盆栽です。
- 花の色: 梅の花は、白、ピンク、赤といった多彩な色があります。品種によって花の大きさや色が異なり、花弁の形も一重咲きや八重咲きなどさまざまです。
- 開花時期: 梅の花は、早ければ1月頃から咲き始め、2月から3月にかけてが見頃です。開花期間は約1か月程度で、冬の寒い時期に咲くため、他の植物が少ない時期に華やかさを提供します。
豊かな香り
梅の花は、見た目だけでなく甘く芳しい香りも特徴です。特に寒い冬の空気の中で漂う梅の香りは、非常に印象的で、多くの人々に親しまれています。この香りが、梅盆栽のもう一つの大きな魅力です。
季節感を楽しめる樹木
梅盆栽は、四季折々の変化を楽しむことができる盆栽です。
- 春: 春には花が終わり、新緑の葉が芽吹き始めます。花が散った後も新しい芽や葉が育ち、生命力を感じさせます。
- 夏: 梅の葉は夏には青々と茂り、果実をつけることもあります。観賞用としての果実は小さく、収穫することも可能です。
- 秋: 秋には葉が色づき、落葉します。葉が落ちると、木全体が休眠期に入ります。
- 冬: 冬には葉が落ち、寒さの中で木が裸木の状態となりますが、春に向けて花芽が膨らんでいく様子が楽しめます。
古木の風格
梅盆栽は、古木の風格を持つことで知られています。幹や枝が年月を経ることで、自然の風雪に耐えたかのような深いひび割れや質感が現れ、これが梅盆栽特有の美しさとされます。特に、樹皮が剥がれた「シャリ」が加わると、さらに古木の風情を感じさせます。
- シャリとジン: 梅盆栽では、幹や枝の一部が枯れて白くなった「シャリ」や「ジン」が作られることがあります。これにより、木の古木感や自然美が一層引き立ちます。
多様な品種
梅には多くの品種があり、盆栽として栽培される品種もさまざまです。花の形や色、香り、樹形などに違いがあり、好みに応じて選ぶことができます。
- 白加賀(しろかが): 大きな白い花を咲かせ、香りが強い品種です。非常に人気があり、盆栽としてもよく用いられます。
- 紅梅(こうばい): 鮮やかな紅色の花を咲かせる品種で、華やかな印象を持つ盆栽です。
- 豊後(ぶんご): 大輪の花が特徴で、実も大きくなりやすい品種です。観賞用としても実用的な魅力があります。
樹形の美しさ
梅盆栽は、幹や枝の形を整えることができ、さまざまな樹形を楽しむことができます。自然な曲線を生かした樹形や、力強い幹を持つスタイルが好まれます。
- 模様木(もようぎ): 幹が自然な曲がりを持ち、枝がバランスよく伸びるスタイルです。梅の花の美しさと、幹や枝の動きが調和した樹形が楽しめます。
- 斜幹(しゃかん): 幹が斜めに伸びるスタイルで、動きのある樹形を楽しむことができます。強風に耐える自然の木の姿を表現します。
日本文化との結びつき
梅は、日本文化において重要な存在であり、古くから庭園や盆栽として愛されてきました。梅は「春の訪れを告げる木」として、縁起が良い木ともされ、長寿や繁栄の象徴とされています。庭や玄関先に飾ることで、福を呼び込む存在と考えられています。
<梅盆栽 管理>
置き場所
梅盆栽は、日光を好むため、日当たりの良い場所に置くことが基本です。
冬: 梅は耐寒性がありますが、霜や冷たい風が強い地域では、屋外に置く場合は風除けを施し、特に寒い時期は屋内に取り込むのが安全です。温暖な地域では屋外でも問題なく冬越しできます。
春〜秋: 成長期には日当たりが良く、風通しの良い場所が最適です。屋外でしっかりと日光を浴びせることで、健康な成長を促します。
夏: 夏場は強い直射日光を避け、半日陰や日除けのある場所に移動させます。また、風通しの良い場所に置いて、暑さによるストレスを軽減させましょう。
水遣り
梅盆栽は、適度な水分を好みますが、根腐れを防ぐためにも過湿には注意が必要です。
- 春と秋: 土が乾いたらたっぷりと水を与えます。乾燥しすぎないように気をつけますが、常に湿った状態は避けるようにします。鉢の底から水が流れ出るまでしっかりと水をやることがポイントです。
- 夏: 高温時期には、土が乾燥しやすいため、朝と夕方の涼しい時間帯に2回水を与えるのが理想的です。昼間は水やりを避けましょう。
- 冬: 冬は休眠期に入るため、土が完全に乾燥しないように少量の水を与える程度で、頻度を減らします。
肥料
梅盆栽は、適切な肥料管理を行うことで、花付きが良くなり、健康な成長を促すことができます。
- 春(2月〜5月): 開花が始まる2月から、固形の有機肥料や液体肥料を月に1〜2回与えます。花が終わった後も、次の成長に向けて肥料を与え続けます。
- 秋(9月〜10月): 秋にもう一度肥料を与えることで、来年の花芽形成を助けます。
- 夏と冬: 夏の猛暑や冬の休眠期には肥料を控えます。成長が鈍くなる時期は、肥料を与えると根に負担をかける可能性があるため注意が必要です。
真夏を除き四月から十月まで、月一回の玉肥と、月に数回、薄めた液肥を水やり代わりに施します。
肥料が足りないと枝が細くなって落葉が早まり、栄養不足から花芽がつかないことがあります。
植え替え
梅盆栽は根が詰まりやすいため、最低でも2年に1回、できれば木が小さいうちは毎年植え替えます。植え替えを行うことで、根の健康を保ち、土の通気性を改善します。
- 時期: 時期は九月中旬頃~十月中旬がよく、逃してしまったら2月下旬から花が終わるまでの間にします。
- 方法: 植え替え時には、古い土を軽く落とし、長く伸びた根や絡み合った根を剪定します。その後、新しい盆栽用土に植え替えます。梅は水はけの良い土が好ましいため、植え替えの用土は基本用土(赤玉土8:砂2)に1割程度の腐葉土を混ぜます。
病害虫
4月のアブラムシと、5~6月の黒星病に注意。特に春から夏にかけては病害虫が発生しやすいので、定期的に葉や枝を観察し、早めに対策を行います。
病気対策: 過湿になると根腐れや病気が発生することがあるので、適切な水やりと排水性の良い土を使用して防ぎましょう。
予防策: 風通しを良くするために、剪定をしっかり行い、枝が密集しすぎないように管理します。必要に応じて市販の殺虫剤や殺菌剤を使用し、病害虫を防ぎます。
冬越し
梅は寒さに強いですが、冬の管理も重要です。特に寒冷地では、霜や寒風から守るための対策が必要です。
- 風除け: 風の強い場所では、鉢に風除けを施して保護します。また、冬の間は屋外での管理が基本ですが、寒さが厳しい地域では、軒下や温室、または簡易ビニールカバーを使って霜を防ぐと良いです。
寒さには強く、関東以西は屋外で冬越しできます。
土が凍るような場合は室内に取り込むか、寒冷紗で覆います。
<梅盆栽 手入れのコツ>
芽摘み
春、新芽が6~7枚開いたら、1枝に葉が4~5枚になるよう、先端の芽を指先で摘み取ります。こうすると短い枝に花をつけさせることがあります。
葉刈り
花の咲いた部分には葉芽がつきにくくなるので、全体に花がつきすぎるようなら六月の初めに、枝元に近い葉を葉柄だけ残して葉刈りをしておきます。
剪定
梅盆栽は、剪定によって形を整え、健康な成長を促します。花が咲いた後や、休眠期に適切な剪定を行うことが重要です。
- 花後の剪定(4月〜5月): 花が終わったら、花が咲いた枝を剪定します。この時に、花が咲いた枝を半分程度切り戻すことで、新しい枝が伸び、翌年の花芽を形成しやすくなります。枝が混み合っている部分や、樹形を乱す枝もこの時期に取り除きます。
- 冬の剪定(12月〜2月): 冬の休眠期には、不要な枝や古い枝を剪定し、樹形を整えます。この剪定で木全体のバランスを整え、風通しを良くします。
花後の剪定が重要。葉芽を1~2つ残して切ります。残すのは枝元に近いほうで、芽のすぐ上を切ります。
折りだめ
ウメは枝を長く伸ばすと花芽がつかなくなってしまうので、伸びすぎた枝は6月に途中で折って折りだめをつくります。
こうすると枝元の方に花がつきます。
針金かけ
梅盆栽は、針金掛けで枝や幹の形を整えることができます。柔軟な若枝を、針金を使って理想的な形に仕立てます。
- 時期: 針金掛けは、枝が柔らかく曲げやすい冬(12月〜2月)や春(3月〜5月)に行うのが理想的です。
- 方法: 枝や幹に針金を巻き付け、ゆっくりと曲げて理想の樹形にします。針金が枝に食い込まないように定期的にチェックし、枝が固定されたら針金を外します。
新枝がやわらかいうちにかけ、落葉する前にはずして形をつくります。
翌年、この枝(前年枝)に花がつきます。
繁殖
2月に接ぎ木をするか、梅雨挿しでふやせます。
実生は同じ品種になるとは限りません。台木づくりと考えましょう。
<梅盆栽 月毎の手入れ>
【一月】
軒下や棚下など、寒風から避けて開花を待ちます。花後は花ガラ摘みを忘れずに。
【二月】
開花のためには寒さに当て、開花中は水切れに注意。三月に入ると植え替え可能です。
【三月】
花後は葉芽を確かめて1~2節で剪定します。芽摘みをして節間の間伸びを防ぎましょう。
【四月】
新芽が伸び出して5~6節ほどの長さになった段階で芽摘み。翌年の花を楽しみたい場合は3~4節残しておく。
【五月】
五月上旬までが芽摘みの適期です。芽押さえ・葉刈りなどは早めに行い、薬剤の定期散布も欠かさない事が肝要です。
【六月】
花芽分化の時期。翌春に花の観賞を望む場合は施肥を控えめにしましょう。定期消毒も忘れずに。
【七月】
養成段階の木は剪定・葉刈りで枝づくりを進めます。ただし翌春、花姿を望む場合は六月以降の剪定は控えてください。
【八月】
樹作り優先なら剪定・葉刈りが可能です。花芽をかき取り、代わりに吹く葉芽で枝作りを進めることも。花を観る場合は枝をさわりません。
【九月】
冬期保護を前提に、十月に入れば養成木に限り1~2節残しでの切込みが可能です。
【十月】
枝作りに徹する場合、剪定で二又に枝分かれを整えます。花姿を鑑賞予定の樹は、輪郭を整える程度に剪定します。
【十一月】
休眠期はジン・シャリ彫刻の適期。梅は木質部が堅いため、電動工具があると重宝します。 花を見る樹への剪定は枝先を整える程度に。
【十二月】
軒下や棚下など、寒風から避ける程度の保護をします。