<皐月盆栽の特徴>
皐月,さつき
(英名:dwarf azalea,satsuki)
花物盆栽の代表とも称される豊富な品種は2000を超えるといわれ、それらがあらゆる樹形に作られています。
明治初期以前の古花、大正初期までの旧花、昭和12年ぐらいまでの中新花、昭和36年ぐらいまでの新花、それ以降の最新花と、つくられた年代によって呼び分けています。
小さくしたいときは旧花の晃山系統がよいでしょう。
一樹種がこれほど長く人気を保っているのは、芽吹きがよく細かな枝が出ること、幹太りが早く風格が出やすいなどの理由があります。特に、5月頃に咲く華やかな花が魅力であり、盆栽として人気があります。以下に、皐月盆栽の特徴を詳しく説明します。
美しい花
皐月盆栽の最大の魅力は、花の美しさです。5月から6月にかけて、さまざまな色や形の花を咲かせます。皐月の花は、単色や複色、さらには模様が入るものまで多種多様で、以下のような色があります。
- 花色の多様性: ピンク、白、赤、紫などが一般的ですが、複数の色が混ざった「絞り」や、斑入りの花もあります。
- 花の形: 花の形状も一重咲きや八重咲きなど多様で、品種ごとに異なる美しさを楽しむことができます。
コンパクトな樹形
皐月盆栽は、コンパクトで繊細な樹形が特徴です。枝がよく分かれ、自然に細かく広がるため、小さな鉢で育てても美しいバランスを保つことができます。針金掛けや剪定によって、さまざまな樹形に仕立てることが可能です。
- 直幹(ちょっかん): 幹がまっすぐに伸びるスタイルで、安定感があります。
- 模様木(もようぎ): 幹が自然に曲がりながら伸びる、動きのある樹形が楽しめます。
- 斜幹(しゃかん): 幹が斜めに伸びるスタイルで、力強い動きが感じられる樹形です。
葉の特徴
皐月の葉は、小さくて濃緑色をしており、常緑性のため1年中楽しむことができます。葉は光沢があり、花の咲いていない時期にも美しい緑の葉を観賞することができます。また、葉の大きさがコンパクトであるため、盆栽としてのバランスも良く、全体の美しさを引き立てます。
成長が早い
皐月は比較的成長が早い植物で、剪定や針金掛けを通じて、自由に樹形を整えやすいです。成長期には新しい枝がたくさん伸び、剪定を定期的に行うことで、きれいな形を保ちながら盆栽を育てることができます。
花期の楽しみ
皐月は、5月から6月にかけて咲くため、春から初夏にかけての花の鑑賞が楽しみの一つです。特に、他の樹木が葉を茂らせる時期に咲くため、花の美しさが際立ちます。品種によっては一株で異なる色の花が咲くものもあり、多彩な楽しみ方ができます。
耐久性と育てやすさ
皐月盆栽は比較的丈夫で育てやすい植物です。寒さや暑さに強く、さまざまな気候に適応します。初めて盆栽を育てる人でも比較的管理がしやすく、適切な手入れを行えば長期間にわたって花を楽しむことができます。
- 耐寒性: 比較的寒さに強いですが、冬の厳しい寒冷地では保護が必要です。霜に当たらないよう、屋内に取り込むか、風の当たらない場所で管理します。
- 耐暑性: 暑さにも強く、夏場も適度な日陰と風通しがあれば問題なく育ちます。
品種の多様性
皐月には非常に多くの品種があり、それぞれ異なる特徴を持っています。花の色や形だけでなく、葉の形や樹形の特徴も異なるため、自分の好みに合った品種を選ぶことができます。例えば、花色や模様、花弁の形状が異なる「千重咲き」や「絞り模様」などの珍しい品種もあり、個性豊かなコレクションを楽しむことができます。
花後の管理が重要
皐月盆栽は、花後の管理が大切です。花が終わった後には、次の花を咲かせるための準備として適切な手入れが必要です。具体的には、花がらを摘み取り、剪定を行い、新しい成長を促します。これによって、翌年も美しい花を楽しむことができます。
日本文化との関わり
皐月は、日本の伝統的な庭園や盆栽文化に深く根付いており、特に江戸時代から庶民に愛されてきました。皐月盆栽は、日本文化の象徴とも言える存在で、品格ある美しさを持っています。古くから長寿や繁栄の象徴として庭や玄関先に植えられてきました。
<皐月盆栽 管理>
置き場所
皐月盆栽は、日当たりの良い場所を好みますが、真夏の強い直射日光や高温多湿に弱いため、場所選びが大切です。
冬: 皐月は耐寒性がありますが、寒冷地では鉢植えの場合、霜や冷風を避けるため、風が当たらない場所や簡易な保護を施します。
春と秋: 日光を十分に浴びせることで、健康的な成長が促されます。日当たりの良い屋外に置くのが最適です。
夏: 強い直射日光や高温に弱いため、半日陰や朝日が当たる場所に移動させます。暑さが厳しい時期は、風通しの良い場所に置くか、遮光ネットを使って日光を和らげます。
水遣り
皐月盆栽は、適度な湿度を好むため、土が乾燥する前に水やりを行うことが重要です。
- 春と秋: 成長期には、水をよく吸うので、土の表面が乾いたらすぐに水を与えます。鉢の底から水が流れ出るまで、たっぷりと与えることが大切です。
- 夏: 夏場は特に乾燥しやすいため、朝と夕方の2回に分けて水を与えます。暑い日中に水を与えると、鉢の温度が急激に変わり根に悪影響を与えるので避けましょう。
- 冬: 冬は休眠期に入るため、水やりの頻度を減らしますが、完全に乾燥させないように適度に水を与えます。
水を好むので、表土が乾いたらたっぷり与え、水切れさせないようにします。花にはかけません。
肥料
皐月は成長期と花後に肥料を与えることで、健康な成長と美しい花を楽しむことができます。
- 春(3月〜5月): 花が咲く前の春には、固形の有機肥料や液体肥料を与えて、花付きが良くなるようにします。月に1〜2回、少量ずつ与えましょう。
- 花後(6月〜7月): 花が終わった後に、次の成長を促すために、もう一度肥料を与えます。花後の肥料は特に重要で、健康な葉と新しい枝を育てるための栄養を補います。
- 夏と冬: 夏の暑い時期と冬の休眠期には肥料を控えます。特に冬は成長が止まるため、肥料を与える必要はありません。
植え替え
皐月盆栽は、2〜3年に一度の植え替えが必要です。植え替えは根の健康を保ち、盆栽全体のバランスを維持するために重要です。
- 時期: 植え替えは、休眠期の春先(3月〜4月)が最適です。新芽が動き出す前に行うことで、木へのダメージを最小限に抑えます。
- 方法: 鉢から取り出し、古い土を軽く落とします。根が絡み合ったり長く伸びすぎた根は、剪定ばさみで軽く切り戻し、健康な根の部分を残します。その後、新しい盆栽用土に植え替えます。土は水はけの良いものを使い、排水性の高い鉢に植えるのが理想です。
三月か花後に鹿沼土を使って植え替えます。
下のほうに大粒、上のほうは小粒にするのは同じです。
違う土に植え替えられていた場合は、しっかり水で根洗いをしないと根腐れの原因になったりします。
根元付近の細い根は大切にし、長い根を切り詰めます。
冬越しの方法
皐月盆栽は耐寒性がありますが、特に寒冷地では冬の寒さから守るための対策が必要です。
- 寒冷地での保護: 鉢植えの皐月は、霜や冷たい風を避けるために、風除けを施すか、屋内に取り込むのが良いです。冬の寒さが厳しい地域では、温室や簡易なビニールハウスで保護するのも一つの方法です。
冬に先端付近の葉が落ちるのは普通です。霜に当てないように管理しましょう。
病害虫
皐月盆栽は、特にカイガラムシやアブラムシ、ハダニなどの害虫に注意が必要です。病害虫が発生しやすい時期には、定期的に葉や枝をチェックして早めに対応することが大切です。
- 予防策: 風通しを良く保ち、枝や葉が密集しないように剪定を行いましょう。また、時折市販の殺虫剤を使って予防することも効果的です。
- 病気対策: 過湿による根腐れや、日照不足による葉の黄ばみなどにも注意が必要です。適度な日光と水やり、通気性の良い土壌を保つことで予防できます。
葉裏にグンバイムシがつきます。黒いフンが見つかったら薬剤を葉裏からも散布します。
<皐月盆栽 手入れのコツ>
花がら摘み
皐月の花後には、花がら摘みを行います。これにより、次の成長を促し、木に余分な負担をかけずに済みます。
- 花がら摘み: 花が終わったら、すぐに花がらを摘み取りましょう。花がらを放置すると、木が無駄にエネルギーを使い、次の年の成長や花付きが悪くなる可能性があります。
見栄えをよくするだけでなく、木を疲れさせないためにも、こまめに行います。
剪定
皐月盆栽は、定期的な剪定や芽摘みを行うことで、美しい樹形と花付きが維持されます。
- 花後の剪定: 花が終わった後(6月頃)、不要な枝や混み合った枝を剪定します。これにより、風通しが良くなり、新しい成長を促します。また、次の年の花芽を付けるために、花後に剪定することが重要です。
- 芽摘み: 4月から5月の間に、新しい芽が伸びてきたら、長く伸びすぎる前に摘み取ることで、枝数を増やし、全体のバランスを保ちます。
- 軽い剪定: 成長が活発な春と夏に、軽い剪定を行うことで、枝の密度をコントロールし、均整の取れた形を作ります。
7~8月には新枝の先端付近に花芽分化してくるので花後すぐに、遅くとも六月中には剪定して樹姿を整えておく必要があります。
枝は左右に伸びる枝を残し、上下に出る枝を落とします。残した枝は2葉、2芽を基本に残して切り詰めます。
改作
枝を伸ばして幹を太らせ、春にスパッおtいたん幹や枝を切り落として植え替え、胴吹き芽を育てます。
胴吹き芽は針金をかけて伏せこみ、枝元が充実してから短く切り詰めます。
葉刈り
花後の剪定後、葉刈りをしても可。
針金かけ
皐月の枝は比較的柔らかく、針金掛けによって樹形を整えることができます。
- 時期: 針金掛けは、枝が柔らかく成長しやすい春から秋に行います。幹や枝に針金を巻いて、理想的な形に整えます。
- 注意点: 針金を長期間掛けすぎると、枝に食い込んで傷がつくことがありますので、定期的にチェックして早めに針金を外しましょう。
植え替え後、活着したら早めに新枝などに針金をかけます。
花後、秋も適期ですが、太枝が折れやすいので気をつけます。また、生長が早く食いこみやすいので、若木のうちは様子を見てはずしてはかける、を繰り返します。
繁殖
新枝のついた前年枝を5~6cmに切り、鹿沼土に挿すと良く活着します。
梅雨挿しもできますが、その時期は取り木もできるので、すぐに花を楽しみたいときは枝分かれの多い部分を選んで取り木にします。
どちらも花芸の良い(花の色形の良い)枝を用いるのがコツです。新品種を作りたいときには実生にします。
サツキは交配がたやすく、枝代わりもできやすいので、新品種がつくりやすい樹種なのです。
<皐月盆栽 月毎の手入れ>
【一月】
寒風から保護します。二月は剪定・整姿の適期ですが、作業後は保護を。
【二月】
二月中旬頃から植え替え可能(要保護)。二月下旬に殺虫剤と殺菌剤の混合液を散布します。
【三月】
葉ダニ防止のため、葉水と定期消毒を励行します。
【四月】
開花中は水切れに注意。ただし花に水がかからないようにすること。花後は速やかに花ガラを取る。
【五月】
水切れに注意して管理し、開花期は肥料を取り除いてください。花後のお礼肥・剪定で樹形の輪郭を整えましょう。
【六月】
花が終われば花後の剪定を行いましょう。灌水時にはたっぷりと葉水も与えてください。
【七月】
翌年の花芽ができる。これ以降は剪定を控えましょう。定期消毒と葉水でハダニ対策を。
【八月】
陽光下でたっぷりと水を与えて管理します。ただし、葉やけ防止のため午後からの直射日光・西日は避けられる環境下で管理しましょう。
【九月】
定期消毒励行。10~15日間隔で鉢廻しし、来年の花つきに備えましょう。軽めの剪定も可能です。
【十月】
11月までは肥培に努め、花つきを良くするため、陽光に良く当てて管理しましょう。
【十一月】
冬場も屋外で管理は可能ですが、秋に強度の剪定を行った樹は霜に当てないよう早めに保護を。保護前には幹洗い、冬期消毒を必ず行いましょう。
【十二月】
幹洗い・冬期消毒を行い、保護する樹は2~3回霜に当ててから保護します。